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心理学を犯罪捜査と地域防犯に生かすNakayamaゼミ

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神戸の連続児童殺傷事件のその後

1 概要 
 1997年5月27日 午前6時42分
 神戸市立の中学校正門前で、切断された頭部を管理人が発見。口には紙片(第1の挑戦状)が差し込まれており、「鬼」「薔薇」の2つの文字が判読可能。15:00頃には首を切断された胴体部分が中学校から西南約500メートル離れたところにある通称「タンク山」のテレビアンテナ基地局内で見つかる。事件の被害者は近くに住む11歳の小学生と判明。捜査本部を設置。
 6月4日
 神戸新聞に第2の挑戦状が届く
 6月28日21:35
 捜査本部で、捜査一課長が記者会見開始。容疑者として14歳の中学2年生を逮捕の第一報
 このあと、容疑者は3月と2月に小学校の女子児童を1名殺害、3名に重傷を負わせていたことが判明したことから連続児童殺傷事件として捜査。
 10月17日
  「行為障害」を認定 医療少年院送致の処分が決定
 2004年3月10日
  少年院を仮退院
 2015年6月
  自伝書「絶歌」を出版
 2015年8月
   ホームページ開設
   http://www.sonzainotaerarenaitomeisa.biz/

2 少年Aについて
(1) 最初の挑戦状
「さあゲームの始まりです 愚鈍な警察諸君 ボクを止めてみたまえ」ではじまる最初の挑戦状を見たとき、私自身は爽快ささえ感じたくらいで、そこの部分だけを読むとかなり知的水準が高いように感じた。しかし、徐々に、社会から虐げられてきた者の「恨み」が鮮明になり、挑戦的な態度は尻すぼみになる。その極めつけは、「学校殺死の酒鬼薔薇」と名乗るところに有り、おまけに“SHOOL KILLER”と綴りを間違えているところにあった。要するに、これを書いた人間は義務教育の中でもさほど努力して勉強しなかったか、その後も教育を受けるの機会を自ら放棄したのではないかというのが第一印象であった。しかし、当時は、よもや、犯人が現役の中学生とは予想もしなかった。

(2)     第二の挑戦状
第二の挑戦状はのちに神戸新聞に送られてきたものであり、定規を使った線引き文字で筆跡を隠そうとしているもので、まず、自分の名前を読み間違えられたことに相当に腹を立てていることから始まる。捜査を攪乱することが目的であるから、もちろん、真実の話はほとんどなく、妄想といえるような想像上の話が中心である。なのでそれをこのまま信じていては犯人像のプロファイリングなどはとうていできない。たとえば、「ボクが子供しか殺せない幼稚な犯罪者と思ったら大間違いである」とあるが、実際のところ、彼が殺人の対象とできるのは子どもしかなかったのではないかと思われる。
注意すべきことは「透明な存在」という表現が3回も出てくることである。というのも今回のHPも「存在の耐えられない透明さ」という台詞で始まっており、よほどこの「透明」という言葉にはこだわりがあるものと思われる。そして、ここでもまた、「透明な存在であるボクを造り出した義務教育と、義務教育を生み出した社会への復讐も忘れてはいない」とあるのは、犯人自身が義務教育以上の教育を受けていないことを示していると、逮捕される前の時点で私は感じました。あとは「復讐」という言葉も何回か繰り返されており、犯行動機のひとつにはこのことが深く関係していると推測された。
そもそも、こうした犯行声明あるいは挑戦状をなぜ、犯人が書くかと言えば、捜査の攪乱するためでもあるけれども、自分の犯行を社会が注目して欲しいという点が大きく、自己顕示欲の強さの反映である。自分がやったことが特別で、誰にもできないような凄いことだと認めて欲しいという気持ち、それもオリンピックでメダルを取ったとか、なにかのコンクールで入賞したというポジティブなことではないので、もっともっとみんなが恐れおののいて、「恐怖と不安」でいっぱいになって欲しいとの願望が表れている。それほど注目を集めたいが、やはり逮捕されたくはないので、誰にも実態の見えない、「透明な存在」でなくてはならない。この点についてはJapan Timesの取材を受けて私がコメントしたものがあり、オンラインで読むことができる。


(3)     出版とHPの立ち上げ
少年Aが今、何をしようとしているのか。
少年Aの書いた本や彼のHPを見て、遺族がどう思うかを考えてもらえばその答えは自ずと明確になるであろう。少なくとも、遺族に対して申し訳がないという気持ちはないし、事件を起こしたことを後悔もしていない。小学生二人を殺しているのだから、成人の犯行であれば死刑が確定する内容である。それほどのことをやっておきながら、このようなこうどうをとるのだから、矯正教育がうまくいったとはいえない。期間が短すぎたと考えることもできる。
ところで、犯人逮捕の直後の新聞報道を見ると「容疑者に謝罪の言葉もない」と書かれていたり、ワイドショーの訳知り顔の識者が「容疑者の反省」に言及することが多いけれども、そんなに簡単に謝罪や反省の気持ちが容疑者の段階でわき出てくるなら、最初から凶悪犯罪など起こさない、と私は思う。
このことについては、もう少し、続きを書いてみたいと考えている。



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